未来につながる風力タービン

スウェーデンのModvion社は、興味深いことに伝統的な材料に回帰して、金属ではなく、木材で風力タービンを製造しています。この新しいモデルは、風力エネルギーの将来に面白い可能性を拓いています。

風力タービンと言われると、ほとんどの人はスチール構造を思い浮かべることでしょう。再生可能な風力発電に利用される風力タービンは、現在のところほぼすべてが金属製です。ただし、鉄鋼業界がどう主張しようとも、風力タービンがスチール製でなければならない理由はありません。スウェーデンの木材加工技術企業Modvion社は、モジュール設計を開発しましたが、木製の風力タービンが実現可能なばかりか、風力発電タワーも木製であるべきと確信しています。

未来主義者のJim Carrollは、風力タービン素材の見直しは、主に2つの動向に沿っていると見ています。まず、材料科学がさまざまな方向に広がりながら進化を加速していること、もう1つは「これまでに不可能だった方法で建築に木材を活用する方法が重視されていること」です。

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安価、軽量、簡便

従来の風力発電タワーと比較すると、Modvion社のモジュール式タワーは輸送が簡単で、軽量の構造部品で構成され、拡張も安価で済みます。Modvion社CEOのOtto Lundmanは次のように説明します。「従来のタワーは複数のシリンダーで出荷していましたが、かなり高さがあるため、物流問題となっていました。Modvion社のタワーにはモジュール式設計が採用されており、高さを確保しながら、物流にも良好に対応します。」Modvion社のタワーは効率に優れ、120 mを超える高さも実現します。

スチールの体積当たり強度は木材よりも高い一方、Modvion社の単板積層材(LVL)と集成材(GLT)製品は、質量単位当たり強度がスチールよりも55 %高く、同じ耐荷力では、スチールよりもコスト効率に優れています。「Modvion社のタワーは、スチール製タワーと同等の強度があり、重量は2/3で、生産コストも低減できます」と、Lundmanは説明を続けます。

さらに木材には、コストと強度以外にも利点があります。遠くから輸送されてくるスチールとは異なり、木材は現地で調達できるため、現地での雇用を創出し、経済的にも利点があります。

チャルマース大学木材構造工学助教授のRobert Jockwerは、海洋性気候では、木材がスチールよりも優れた特性を示すと言います。塩水はスチールに過酷な影響を与えますが、「木材に悪影響はありません。濡らしてはなりませんが、海洋性気候の塩を含んだ空気でも、木材には問題ではありません。特異な気候にも、木材はスチールよりも優れた適合性を示します。」

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環境面での利点

スチールの代わりに木材を利用すると、製造工程での二酸化炭素排出量を削減できるため、木製の風力発電タワーは環境面でも多大な利点があります。二酸化炭素隔離も含めて、木製タワーは配備までの二酸化炭素排出量を1機当たり約2,000トン削減できると試算されています。

木材本来の二酸化炭素隔離特性により、木製の風力発電タービンによってカーボンニュートラルを実現できます。樹木の成長過程で二酸化炭素を取り込み、貯留するため、風力発電施設に使われる他部品の製造時の排出もオフセットできます。チャルマース大学持続可能な電力生産担当教授で、スウェーデン風力発電技術センター(Swedish Wind Power Technology Centre)理事のOla Carlsonは、木材を「理想的な二酸化炭素吸収源」と呼びます。

木製タワーの耐用年数が切れても、材料をすべてリサイクルできます。これとは対照的に、従来の風力タービンは複合ガラスやカーボンブレードが使われているため、いずれもリサイクルが難しく、リサイクル材料としてもそれほど価値はありません。そのため、耐用年数(通常20~25年)が切れると、多くの風力タービンブレードは埋め立て処理されます。

では、木製風力タービンは将来的に全面的に採用されるのでしょうか?木製タービンには明らかな利点が複数あるものの、Carlson教授は「木材を新たな用途に使うには、機械的試験を何度も実施して、材料強度を確認し、最適の設計を確認する必要がある」と見ています。一方Jockwer教授は、従来のLVL材の利用と比較すると、「新しい用途には異なる耐荷力の問題」があるため、これが課題となると確信しています。いずれにしても、初の木製タワーは2020年春に完成予定で、これが、カーボンニュートラルなエネルギー生産に向けて一歩前進となると期待されています。

:Lorelei Yang
写真:Modvion社